第一 基本調理 ニ、材料の選び方

ニ、材料の選び方

 調理材料を選ぶにあたりてはその地方における特産品、出盛品等を選ぶはもちろん、一般に栄養価高く、銭価低き経済的食品たるのほか、衛生上食中毒のおそれ無きものたることに注意を要す。

 調理材料選定上、食中毒予防につき注意すべき事項を挙ぐれば左のごとし。

 一、 一般に新鮮なる材料を選び、腐敗のおそれあるものを使用せざること肝要なり。これ新鮮なる食品は中毒のおそれなきのみならず、栄養上もまた可良なればなり。

 二、缶詰または冷凍品等のごとき食品はこれを開缶し、または還元せばかえって生物よりも速やかに腐敗するをもって、これら食品は調理または食用直前に開缶し、または還元するを要す。

 三、一般に夏季にありては食品腐敗し易きのみならず、消化機能減退しありて食中毒を起し易きものにして、これがため生魚(殊にさば、いか、たこ等)、豆腐、酢のもの、餡等を夏季禁食として食用せざる場合多し。これ、さばは腐敗し易く、たこは消化不良、朝食の豆腐は前夜製造せしものを使用すること多く、ために腐敗を招き易きと、酢のもののごときは材料に生物を使用すること多きをもって、細菌に因る中毒に罹り易きをもってなり。

 四、食品中には毒素を含むものあり。馬鈴薯の発芽の際生ずる毒素類、また「ふぐ」の内臓中に含む毒素のごとし、これらは選定上注意を要す。

 五、その他食中毒および伝染病予防上、蝿および鼠の駆除は最も肝要にして、調理材料はなる べく防蝿装置ある場所に格納するを可とす。

 以上のほか調理材料選定にあたりては、調理の種類により材料の選定に注意すべきものにし て、たとえば野外携行食、軟食、流動食等の特殊調理にありては、おのおのの要求に合するごと く材料の選定を必要とすべく、また煮物、汁物、焼き物等調理方法によりても差異を生ず。これ らについてはおのおのその調理法の項において記述すべし。