第一 基本調理 七、蒸し方

七、蒸し方

 蒸し方は茶碗蒸し、蒸し羊羹、蒸し「パン」または蒸気炊飯等のごとく、材料の形を完全に保たしめんとするとき、または水を加えずして調理し、しかも湿気ある熱を加うる必要あるとき実施する調理法なり。

 蒸し方につき注意すべき諸点を左に述べん。

 一、蒸寵を使用する場合、枠は完全に重ね合わせ、蓋を取らざること、また飯蒸釜を使用する場合には戸扉および「ドレーンコック〔排水栓〕」を厳密に閉ずべし。ただし蒸し「パン」のごとく膨脹せしむるを目的とする場合、強く圧するときは膨脹を妨ぐるをもって、蓋または扉に幾分の間隙を置くを良しとす。

 二、蒸し難き物、またはじゅうぶん蒸すことを必要とする材料は、最下の容器に入るるべし。

 三、釜の湯は常に八分目を保たしめ、煮減りたるときは熱湯にて補足すべし、冷水をもって補足するときは作業を中絶せしむ。

 四、蒸気は冷たき器物に触るるときは直ちに水滴に還元し、調理品の上に滴下するものなり。ゆえにこれを嫌う調理にありては、布巾または蓋等をもってあらかじめ食品を覆い置くを良しとす。

 五、強飯等のごとく水分の不足により蒸し難きものにありては、ときどき打ち水をなすべし。

 六、蒸し物調理に際してはすべて手前に蒸寵を引くべし、たとえば茶碗蒸しの加減を見る場合、あるいは出来上がりたる蒸寵を下より抜く場合等、いずれも同じ。しからざれば高熱の蒸気噴出のため火傷することあるべし。