第一 基本調理 八、焼き方

八、焼き方

 焼き方とは食品を乾熱にて調理するものをいい、串または金網によって焼く直接法と、焼き竃または「フライ」鍋等に入れて焼く間接法とあり。

 而していずれの法を問わず黒焦げとならざる程度に焼き色を付け、材料の心部までよく火を通して生焼けにならざるを要件とし、これがため火加減に最も注意を要す、なお魚の焼き物にありては崩れを防ぎ、色彩を整うるため、まず裏より七分通り焼き、のち表を返して残り三分をほど良き鳶色の付く程度に焼くを良しとす。

 いま焼き方につき注意すべき諸点を左に述べん。

 イ、直接法

 一、直接法に用うる燃料は木炭にして、質硬く煤らざる上等品を可とす。下等品は煙焔を生じ、従って黒焦げ、偏焼となり易く、かつ時間、燃料共に不経済なり。

 二、火力強きに過ぐるときは、材料の表面のみ黒焦げとなり、心部に火の通り悪しきをもって、火と材料との間には常に二、三寸〔約六センチから九センチ〕の距離を置き、かつ火鉢の風口を加減するを要す。

 三、金網または鉄架はあらかじめ熱して魚を載せ、また金串は熱きうちによく捻りて抜くときは、焼き上げ材料より金串を抜くに容易なり。

 四、魚は肉の方より(種類により異なるものあり)、鳥肉は皮の方より焼きはじむるを良しとす。これ、魚は皮の方に、鳥は肉の方に縮み、外観悪しくなるを防ぐためなり。

 口、間接法

 一、間接法に使用する材料は種類を選ばず、何にても可なりといえども、その煤煙または悪臭を材料に触れしめざるよう注意すべし。

 二、卵焼き、または「ビフテキ」等の調理には「フライ」鍋または鉄板にあらかじめ脂油を敷き、焦げ付きを防ぐべし。

 三、鍋の底または材料の表面に食塩を振り、蓋をなし、弱火にて蒸し焼きにすることあり。

 四、焼き竃の熱度計により知り得るも、熱度計なきものにありては、新聞紙の小片を竃内に入れ、約五分間ののち取り出して赤黒く変ずるものは強火(華氏三〇〇度内外)とし、赤茶色なるときは中火(華氏二五〇度内外)にして薄茶色は弱火(華氏二〇〇度内外)と知るべし。

 ハ、焼き方に関する注意

 焼き物の熱度は華氏三〇〇度前後の高熱なれば魚焼網を取り扱う場合は手袋を用い、さらに適当なる布片をもってすべし。この場合薄き濡れ布巾はかえって火傷の危険あり。