第一 基本調理 一〇、和え方

一〇、和え方

 和え方とは、二種以上の材料を調味品と共に単に混ぜ合わす調理にして、これに使用する材料は生物を使用せば栄養分殊に「ビタミン」の損失を防ぎ、労力、燃料共に経済なるも、病原菌混

入のおそれあるをもって消毒する必要あり。ゆえにいったん茄でたるものか、または蒸したるものを使用する場合多し。

 和え方につき注意すべき諸点を左に述べん。

一、材料の水分を切ること。

 和え物は材料に水分を多量に含むときは、その心部まで調味品の浸み難きのみならず、表面に付着し難きをもって、なるべく材料の水分を切る必要あり。これがため水洗後暫時乾かすか、ま

たは茄でて使用するを普通とす。

二、材料が冷えたるのち和えること。

 材料の温かきうち和えるときは香味(殊に酢和えの酢のごときは)発散して「キキ」を悪くするのみならず、色彩、形態を保持し難く、かつ材料によりては衛生上もよろしからず。

三、材料にはあらかじめ薄味を付け置くを良しとす。

 前述の如く和え物は材料の心部に調味品浸み難きをもって、あらかじめこれに薄味を付け置くを良しとす。

 ただし酢の物にありては下味を付けざるを普通とするも、薄き下味なれば可なり。