第一 基本調理 一一、味の付け方

一一、味の付け方

 調味品は他の材料と異なり、献立に示されたる分量をそのまま一回に投入すべきものにあらず、まず普通の場合はその八分目を入れ、残り二分は味を見つつ適量を使用すべきものなり。こ

れは調味品その物の「キキ」の強弱および調理材料の性状ならびに量の多少により加減すべきものなり。

 ゆえに献立に示す調味品の分量は、単にその標準を示すに過ぎざるものなるをもって、実施にあたりてはこれを加減し適量を使用することに注意すべし。

 また調味品には「味」を主とするものと「香り」を主とするものとあり、味を主とするものは最初より入れ、じゅうぶん煮出し、香りを主とするものにありては火を止める直前に入るるを良

しとす。

 醤油を使用する場合、その一部分を食塩にて補うを有利とする場合多し、また砂糖のみを使用する菓子類にありては少量の食塩を混ずれば甘味を増し、かつ味を高尚にするものなり。

 軍隊炊事のごとく、多人数の食事を調理する所にありては、調理者は単に自己の嗜好を基として味付けすべきものにあらず、なるべく多人数の欲するごとく味付けせざるべからず、これがた

め甘味、鹹味〔塩からさ〕、酸味、辛味〔刺激的なからさ〕等のどの程度が最も多数の兵卒に嗜好せらるるやを調査し、自隊における標準味を知り、特定の味見人を置きてこれに合するごとく

味付けすべきものなり。