第二 特殊調理 一、携行食調理

第二 特殊調理

   一、携行食調理

 携行食調理上必要なる諸注意を述ぶれば左のごとし。

 (1)携行容易なること。

 (2)腐敗し難きものなること。

 (3)汁気少なく、崩れ難きものなること。

 (4)香味強烈にして食慾を増進せしむるものなること。

 (5)少量をもってよく副食の用をなし、かつ腹持ち良きものなること。

 (6)簡単に調理し得るものなること。

 而してこれらの要件を充たすためには、次の各項に注意せざるべからず。

   イ、材料の選定

 材料はなるべく水分少なきを可とし、これがため魚肉よりも獣肉、生魚よりも乾塩魚、葉菜類よりも根茎類を良しとす。

 また馬鈴薯、里芋、小麦粉製品のごとき澱粉質のものは腐敗し易きをもって、なるべく使用せざるを可とす。

 缶詰は最も腐敗し難きものなるも、開缶後は普通食品と同様、もしくはそれ以上速やかに腐敗するものなるをもって、携行食には缶詰のまま携行するを良しとす。

   ロ、調理法

 煮物と焼き物とを比較するに、焼き物の方が腐敗し難く、また同じ焼き物にても醤油漬焼、味噌漬焼、塩焼等を良しとす。

 煮物は佃煮等のごとく塩鹹く煮るか、煮豆のごとく砂糖にてごく甘くするか、あるいは砂糖醤油にて甘鹹くするを良しとす。

 いま携行食調理に適当なるものを例示すれば左のごとし。

 (1)焼き物

  塩鮭、塩鰯、開きサンマ、目刺し、味噌漬焼、醤油漬焼。

 (2)煮物

  肉類と澱粉質少なき牛蒡、人参、蓮根等との味噌煮、鉄火味噌、豆類の硬煮または砂糖煮、田麩、蒟蒻の生姜煮、きんぴら牛蒡、甘鹹煮、甘露煮、佃煮。

 (3)漬け物

  梅漬、梅干、沢庵、奈良漬、ラッキョ漬等すべて漬け物は携行食に適す。