08.納豆の製法

八、納豆の製法

納豆の製法には藁に存在する自然納豆菌の利用による製法(在来法)と、純粋培養せる納豆菌の利用による製法(村松式)の二種あり。

製法 その一 (在来法)

大豆の浸し方

 まず上等の大豆を(容器に)とり、これを前夜より水に浸し置く。

蒸し方

 翌朝蒸籠にて味噌豆のごとく軟かくなるまで蒸す。飯蒸鍋のごとき圧力(三〇ポンドならば一時間ないし二時間)のあるものならば二時間位蒸す。

床入れ

 蒸し大豆は体温くらいに冷却したるときこれを清潔なる「藁ヅト」に包み、または容器に藁と交互に層をなして入れ置く。容器の外囲いは筵または毛布のごとき保温材料をもって包み置く。

保温

 温室またはパン焼き竃あるいは汽缶の上など、温かき場所(適温は摂氏三十五度ないし四十度)に放置す、汽缶またはパン焼き竈上に置くときは、過度の熱が直接に触れざるよう藁類を下敷きとすべし。

出来上がり

 約三日間にて出来上がる。

 冷え込むときは出来上がらず、温度高過ぎたるときは臭気を生ずるおそれあり。

製法 その二(村松式)

材料

 大豆 村松式納豆菌

 在来法のごとく蒸熟したる大豆を斌に入れ、摂氏四十度位に冷却したるとき納豆菌を注加し、よく混和せしめ、これを適宜の清潔なる容器に入れ、温所(摂氏三、四十度)に置き約十二時間ないし二十四時間保温す。

備考

 保温二十四時間位にして大豆の表面に皺を生じ、厚き膜を形成し、粒粒相付着して分離せられざるに至る、もし保温時間長きに至るときは豆は黒変し、かつ「アンモニア」の発生多量となるべし。