09.ラードの製法

九、ラードの製法

製法

 イ、豚の脂肪はなるべく細切りとなして鍋に入れ、徐徐に加熱すれば脂肪は漸次融解し始む。

 ロ、脂肪はラードの熱により自ら融解を促進するをもって、ときどき杓子等にて攪拌しつつ、まったく脂肪溶出し、固く緊縮したる滓の残るまで煮続くるものとす。

 ハ、溶出したるラードはときどきこれを汲み取るものとす(ただし少量ずつ残し置くべし)。

 ニ、蒸気釜を用うるときはラードの焦げ付くおそれなきも、ラードを直火鍋にて採取する場合は焦げ付かざるよう、最初脂肪肉一キログラムにつき一〇〇ミリリットルほどの水を入れて攪拌するを可とす。

 ホ、ラードを製するには、煙立つがごとき烈火を避け、気長く文火をもって融解せしめ、ある程度までラードの残滓はこれをラード圧出器(もしあらば)に掛け、絞り出すを可とす。

備考

 イ、豚脂のかわりに牛脂を用うるときはヘットとなる。

 ロ、ラードの残滓は、これを捨つることなく味噌汁に混ぜるときは汁を美味ならしむるものとす。

 ハ、普通の脂肪一キログラムより八〇〇グラムないし九〇〇グラムの割合をもって製出し得るものとす。

 ニ、ラードの新しきものを用うるときは、その前に悪臭を去るため文火で気長く火入れをすべし。